今回は、﹃ユリイカ﹄の﹃鋼の錬金術師﹄完結記念特集︵2010年12月号︶より、早尾貴紀﹁﹃鋼の錬金術師﹄から読み解く国家と民族﹂を取り上げる。 私は読んだ漫画の数でいうと同世代の人と比べてかなり少ない。自分が読んだことのある﹁超人気作﹂は数少なく、その中でもさらに数少ないお気に入りの一つが﹃鋼の錬金術師﹄である。 まず、この文章の紹介に入る前段階として、自分の言葉で﹃鋼の錬金術師﹄の特徴を紹介しておく︵例によって若干のネタバレを含むので、注意してください︶。ざっと好きなところを箇条書きにしておくと、以下のような感じ。本当は一つ一つについて詳しく論じたいところだが、またの機会にする。 壮大かつ緻密な物語展開から、きっちり伏線を畳み切って完結した作品である。 当たり前のように見えて、その時の人気によって打ち切りの可能性を常に秘めている連載漫画では、このこと自体がまず奇跡的である。無駄な引き延ば