スウェーデンのある地域でのこと。小学校低学年から10代後半までの子どもたちに、︿謎の病﹀が発生している。子どもたちは最初、不安になりふさぎ込む。そして徐々に引きこもりはじめ、口数が減っていき、そのうちまったく話さなくなる。最後にはベッドで寝たきりとなり、最悪の場合、食べもしなければ目も開かなくなってしまう。そうした子どもたちの数は、2015年から2016年の間だけでも、なんと169人に達している。﹁あきらめ症候群﹂と呼ばれるこの病は、では、どうして発生しているのだろうか。 本書は、そのような︿謎の病﹀の原因を神経科医が追ったものである。扱われているのはあきらめ症候群だけではない。カザフスタンのかつての鉱山町で発生した﹁眠り病﹂︵第3章︶や、キューバ駐在のアメリカ外交官の間で流行した﹁ハバナ症候群﹂︵第5章︶など、8つの章でおもに7つの病がとりあげられている。著者のオサリバンは、関係者へのイ