会社のラウンジで日本人の同僚とコーヒーを飲んでいると、米国人テスターでありアニメ・マンガオタクのSが話しかけてきた。 ﹁ハイ、ガイズ、"MOE"についてちょっと聞きたいんだけど......﹂ ﹁……何?﹃萌え﹄?﹂ 同僚がメガネをクイとあげた。目が光った。何を隠そう、彼は萌えにはちょいとうるさい男なのである。俺は彼を﹁師匠﹂と呼ぶ。人によっては﹁アニオタ﹂と呼ぶ。 ﹁女の子に使う"MOE-RU"てのは、どういう意味だい?"KAWAII"とは違うの?﹂ 師匠がメガネを拭きはじめた。おそらく、今、彼の頭の中は、﹁萌え﹂についての大量の言説や独自の解釈が渦巻いているのだろう。 ﹁ふむ、"MOE"か……。その単語は一般的に言えば、﹃行動を好ましく感じる﹄という意味であるな。ただし、言葉の定義よりもSが自分で﹃萌え﹄を感じることが大事だと思う。﹂ なるほど、たしかに。 ﹁うーん……、でも、みんなが盛