ようこそ、大人の世界へ――﹁Ai Nikkor 45mm F2.8P﹂‥矢野渉の﹁金属魂﹂Vol.12 失われた濃密な時間に思いを寄せて レンズ設計に関するエピソードで、気に入っているものがある。 1960年ぐらいまで︵つまりコンピュータが普及する前︶のレンズ設計は、ほとんどの時間を﹁光線追跡計算﹂というものに費やしていたのだそうだ。設計された光学系に入った光が、どのように屈折して結像するかを計算するもので、選抜された大勢の女性がその7ケタの演算にあたった。2人1組になり、お互いに検算を繰り返しながらの作業。それでも午前中に1本、休みを挟んで午後にもう1本の光軸計算をするのがやっとだったようだ。膨大な時間をかけてやっと出来上がったレンズデータを見ながら、設計者はさらに性能の向上を図るための手段を考える……。 僕が好きなのは、この、昔のレンズ設計の現場を包みこむ濃密な時間の流れだ。膨大な時
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