去年の秋から大学のサバティカルでフランスに生活していたが、最近日本に帰国した。10年ぶりに暮らしたヨーロッパは、ウクライナ戦争の影響もありエネルギー不足が深刻で、物価がとにかく高く、加えて円安の三重苦だった。卵4個︵2.5ユーロ、380円!︶を買うにも売り場で5分逡巡し、これほどの貧乏感を味わったのも大学時代以来であったが、何よりもショックだったのは、日本が発展途上国レベルにまで﹁安い﹂国になってしまったという事実だった。経済的にだけでなく、日本の政治的な存在感は極めて薄く、アジアというと中国か、近年ヨーロッパへの移民が多いインドかといったところで、日本がフランスでアニメとラーメンに集約されてしまっているのは、もはや屈辱であった。 ﹁国ガチャ﹂という言葉が頭に浮かぶ。﹁親ガチャ﹂以前の﹁国ガチャ﹂が、海外では世界の基本的な秩序として認識されている。親と同様、生まれついた国は簡単には変えられ