﹁侍医長出ました!﹂ 自宅を出る高木侍医長 この記事の画像︵12枚︶ 今からちょうど30年前のことだ。 昭和64年︵1989年︶、1月7日の早朝5時、﹁ジリリーン﹂と宮内庁クラブの電話が鳴った。代々木にある高木侍医長宅前で張り番をしていた記者からで、﹁待医長出ました!﹂と叫んでいる。 この時間の登庁は、ついにその時が来た、ということだ。 当時の宮内庁クラブは、昭和天皇のご病気対応で、加盟全社の記者が泊まり込んでいた。フジテレビは朝日、産経、共同と同じブースで、それぞれ机の前に簡易ベッドを置いて寝ていた。僕はその日の当番だった。 他社にバレないよう、記者クラブの外にある公衆電話から、本社デスクに電話しようかとも思ったが、僕も、他社の記者も、そんなことをするにはもうクタクタに疲れていた。いいや、このまま電話しよう。 それでもデスクには﹁侍医長出ました﹂と小声で伝えたのだが、その瞬間、他の3人が