ネットの普及がこれほど進んだ現代でも、手書きの通信添削で数学教育を行う雑誌の名物企画がある。雑誌﹁大学への数学﹂の﹁学力コンテスト﹂だ。60年以上前から難問の挑戦状を全国の高校生に届けてきた。それは読者の学力向上だけでなく、日本の数学研究者育成にもつながっている。同誌編集部と﹁学コンの伝説﹂と呼ばれた京大名誉教授・森重文氏のインタビューをお届けする。︵取材・文‥神田憲行/撮影‥鈴木愛子/Yahoo!ニュース 特集編集部︶ その出版社は東京・広尾の静かな住宅街の一角にある。﹁東京出版﹂という社名の看板も小さく控えめで、実際、地図を片手に会社を探して右往左往してしまった。建物の外階段を上がって中に入り、その先の2階に﹁大学への数学﹂編集部がある。数学専門誌の編集部なのでホワイトボードに難しい数式が書いてあったりするのかと想像していたが、机が並んだ島が三つあるだけの、意外なほど普通の編集部だった