かつてスパイ小説や軍事技術を連想させていた﹁暗号﹂。今では,インターネットや携帯電話をはじめ社会生活のインフラストラクチャーに必要不可欠な技術として広がっている。三菱電機は,暗号の世界で後発だったにもかかわらず,10年余りでW-CDMA方式の第3世代携帯電話向け標準暗号の開発にこぎ着けた。その誕生の経緯は,暗号研究を始めたばかりの1人の男が15年間一度も破られなかった米国標準暗号﹁DES︵デス︶﹂を解読することから始まった。 01100101 10010101 01100101 .... 11001010 10001101 11100101 .... 誰もいない休日の社内,松井充は来る日も来る日もディスプレイに浮かび上がる﹁0﹂と﹁1﹂の白い数字に目を走らせていた。 三菱電機への入社は1987年。入社後の数年間は,誤り訂正符号に関する研究開発にのめり込む。ある暗号解読の研究成果との出会いを
![第1回:難攻不落の暗号を落とせ(上)](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/bed39b5962a5d552c95b6d796db8f55e72d32943/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fxtech.nikkei.com%2Fimages%2Fn%2Fxtech%2F2020%2Fogp_nikkeixtech_hexagon.jpg%3F20220512)