豊臣秀次と和泉式部 呉座勇一の﹃応仁の乱﹄︵中公新書︶が、堅実な歴史書にしては異例のベストセラーになっているという。かつて中公新書では、神坂次郎の﹃元禄御畳奉行の日記﹄︵一九八四︶が売れたし、磯田道史﹃武士の家計簿﹄︵新潮新書、二〇〇三︶も売れたが、これらが、武士の記録を現代のサラリーマンに重ね合わせるものだったのに対して、﹃応仁の乱﹄は異色だ。最近、歴史にひそかな人気があり、吉川弘文館や山川出版社で出すような歴史書も文学研究書よりは売れているようだ。 日本史研究では、古代史に関する推理もの的なものが人気があったのだが、これらはそれとも違う。知識的読者の間には、﹁史料﹂への関心が高まっている。かつて歴史は、﹃太閤記﹄などの歴史記録を基礎にしていたが、今では、古文書、古記録︵貴族の日記など︶を一次史料として重んじる。一般読者はそういう一次史料の解読やアクセスがままならないため、歴史学者に対し