私の﹃日本文化論のインチキ﹄を池田信夫は﹁最もインチキな日本文化論﹂と言ったのであるが、私が﹁どこがインチキなのか﹂と訊いたら、﹁インチキでないところがない﹂と言ったまま逃げた。 だいたい、﹁この本はつくり話のオンパレード﹂とか、﹁事実誤認が多い﹂とか言って、どこがそうなのか具体的にあげないやつというのは、人間が不真面目であり不誠実であり、自分はいい加減なことを言っていますと自白しているようなものである。 矢崎泰久が﹃口きかん﹄で、川端康成の﹃東京の人﹄は佐藤碧子が代作した、と書いているが、矢崎の著作に対して﹁つくり話のオンパレード﹂と言ったのが佐藤碧子で、しかしどこがそうなのか具体的には書かれていないし、しかもこれは佐藤の文章ですらなく、猪瀬直樹が﹁佐藤がこう言っている﹂と書いているだけである。佐藤はもう故人だが、その話を聞いた猪瀬は、矢崎に対して、どこが具体的につくり話なのか明らかにす