知里真志保﹃アイヌ語入門―とくに地名研究者のために―﹄︵北海道出版企画センター︶という本がある。判型でいうと、﹁小B6判﹂というのだろうか、一般的な新書よりもすこしだけ小さなサイズの本である。同じデザインでかつ同じ判型の本に、﹃地名アイヌ語小辞典﹄﹃和人は舟を食う﹄︵いずれも知里の著作︶などもあるから、多分、シリーズのうちの一冊といった位置づけになるのだろう。 この﹃アイヌ語入門﹄は、1956年6月に初版が出ており、手許にあるのは2004年1月の﹁七刷﹂。現在も新本で入手できるようだ。小さな本ながら、アイヌ語の音韻法則などについて詳述されており、たいへん勉強になるのだが、先覚たちへの批判には容赦がない。たとえば、﹁この人︵Kという農学博士―引用者︶は大まじめで,こういうチャランケ*1をつけたのである﹂︵p.11︶、﹁K氏ていどのアイヌ文法の知識では﹂云々︵p.13︶、﹁永田方正氏は,そうい