現代で私たちが食べている握り寿司は、1800年代の初めに江戸の寿司職人である華屋与兵衛が考案したといわれている。下拵えした魚の切り身を手のひらで握った酢飯にのせて供したのが始まりだ。冷蔵設備がない時代に魚を長く保存するために知恵を絞り、ひと手間加えるのが江戸前流。当時の握りは大きく、〝一貫一口半〞といわれていた。銀座にはそんな江戸前寿司の仕事を受け継ぎ、現代の味覚に合う味を探求しながら客をもてなしてくれる高級寿司店が軒を連ねる。 銀座で130年以上歴史を刻んできた〈銀座寿司幸本店〉では、江戸前寿司の真髄に触れながら、上質な寿司を堪能することができる。4代目として店を切り盛りするご主人の杉山衛さんは話す。 「15年くらい前は接待でいらっしゃるお客さんが6〜7割でしたが、いまは仲間やパートナーと訪れる方、仲の良い会社同士の方などさまざまです。ひとりで訪れる女性客も珍しくなくなりましたね」