建物という建物が黒焦げとなり、街全体が廃墟と化したマリウポリの空撮映像を観て、胸をえぐられる思いがした。ウクライナのゼレンスキー大統領は﹁︵ロシア軍は︶街から何もかもを消し、灰で覆われた死の土地にしようとしている﹂と語ったが、まさにその言葉通りの光景だった。私の眼には、原爆投下直後の広島や長崎の光景と重なって見えた。 ロシア軍は人口40万のこの街を包囲し、連日激しい空爆や砲撃を加えた。マリウポリの市長の報道官は、ロシア軍に包囲されて以降、子ども約210人を含む約5000人が死亡したと明らかにした︵﹁ロイター通信﹂、3月28日︶。これが事実ならば、文字通りの﹁ジェノサイド︵大量虐殺︶﹂である。 ﹁領土的野心﹂に基づく侵略戦争 ロシアのプーチン大統領は侵攻を開始するにあたり、隣国ウクライナのNATO︵北大西洋条約機構︶への加盟は﹁ロシアの生死にかかわる脅威﹂だと語った︵2月24日の国民向けテレ