筆者は、組織不祥事という特殊な分野を研究対象とするに当たり、当該事案に関する事実関係が判明するまでは論評を避けることを原則としている。事実の裏付けがないまま推測だけを積み重ねても原因究明には結びつかないうえに、むしろ誤解を世間に広める危険性が大きいからだ。 しかし本稿は、あえてその原則に違背して、東京電力の福島第1原子力発電所の事故をテーマに取り上げる。本事故については、事実関係の調査どころか、いまだ終息の見通しさえ立たない状況であるが、国内各地の原発では既に対策に着手しており、この段階で私見を示すことに意義があると考えるからだ。なお、今回は燃料棒の破損を防止できなかった点に絞って論じることとする。 津波で冠水して電源を喪失、原子炉の冷却手段を失う3月11日午後2時46分、三陸沖でマグニチュード9.0の巨大地震が発生した。福島第1原発では1~3号機が稼働中であったが、直ちに制御棒が挿入さ
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