とうとう読んでしまった、SFの最高傑作として名高い﹃月は無慈悲な夜の女王﹄。大事にとっといた一品を食べてしまった、充実感と喪失感で胸一杯なところ。 地球からの搾取に苦しむ月世界人が、地球を相手に独立宣言をするストーリーラインに、テクノロジー、ハードサイエンス、ヒューマンドラマから、政治・経済・文化をてんこ盛りにしてくれる。 不思議なことに、未読のはずなのに既読感が激しい。どこを切っても﹁なつかしい﹂が出てくるのだ。 たとえば、“自我”を持つコンピュータ。自ら学び、自己生成プログラムを走らせる。人とコミュニケートし、自分を守るためにプロテクトをかけるあたり、﹃2001年宇宙の旅﹄のHAL9000や﹃わたしは真悟﹄を思い出す。そのコンピュータがきっかけで、普通の主人公が革命に関わってゆく様は、典型的な巻き込まれ型+召喚ヒーローもの。﹃マックス・ヘッドルーム﹄や﹃ジョウント﹄︵スティーヴン・キン