台湾の首都・台北市街と、それを取り巻く緑に覆われた山々を見下ろすオフィスで、モリス・チャン︵張忠謀、92︶はテクニカラーのパターンが刻印された古い本を手にとった。 ﹃超LSIシステム入門﹄︵培風館︶と題されたその本は、難解なコンピューターチップの設計を解説した大学院レベルの教科書だ。チャンはその本をうやうやしくこちらに見せた。 ﹁重要なのは、1980年という出版年です﹂ 同書はパズルの﹁最初の1ピース﹂となり、チャン自身のキャリアのみならず、世界の電子産業を変えた。 ﹁最も不安定な場所﹂にある巨大企業 チャンはこの教科書を読み、コンピューターの頭脳として機能するマイクロチップ︵半導体素子︶の生産工程を設計と製造に分けることができるかもしれないとひらめいた。それは、当時の半導体業界の常識とは正反対の発想だった。 当時エンジニアだったチャンは54歳で、多くの人が引退を考えはじめる年齢に達してい
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