もう、だいぶん前のことになると思う。一年よりはもっと前、ニ年か三年くらい前だろうか。今の職場の、コンドームと妊娠検査薬を置いている売り場で、若い男性のお客様に声をかけられた。 ﹁あのっ! すいませんっ!﹂ ﹁はい。なんでしょう。﹂ ﹁あのっ! 彼女がっ、妊娠したって言うんですけど、ぼくは、何を買ったらいいですか?﹂ 男性のお客様の年の頃は、二十歳になっているかどうか、少年というには幼さが少なく、青年というにはやや童顔すぎるような、でも、日々お仕事をされているのだろうな、職種は、左官さんか大工さんだろうか、といういでたち。 お客様にとって、望ましい妊娠としてのご相談なのか、望ましくない妊娠としてのご相談なのか、こういう仕事では両方ともあることなので、どちらだろうかと探りつつ、お話をうかがう。 ﹁妊娠なさったということは、もう検査薬で確認なさったということでしょうか?﹂ ﹁はいっ! ここにある