図1: eGFRDのアルゴリズムに基づいて、細胞内の異なる分子の会合をシミュレーションしたときの三次元像。 enlarge image 細胞内の生物学的プロセスのシミュレーションにおける最大の課題の1つは、実際の分子の動きを正確に反映した数理モデルを開発することである。これを目的として、1996年慶應義塾大学で﹁E-Cell﹂プロジェクトが発足し、国産の細胞シミュレーター﹁E-Cell﹂が開発された。そのプロジェクトの創設メンバーの1人である理研基幹研究所︵神奈川県横浜市︶の高橋恒一チームリーダー︵TL︶は、これまで一貫して細胞丸ごと規模の包括的シミュレーション法の開発に取り組んできた。 高橋TLが現在重点的に研究しているのは、シグナル伝達分子群の動的な挙動である。この種の解析は従来、分子が細胞内に均一に分布していると仮定する﹁平均場﹂理論に基づくことが多かった。こうした単純化したモデルは