﹁派遣切り﹂、﹁期間工切り﹂、さらにはその背後にある﹁ワーキング・プア﹂など非正規労働者をめぐる社会問題が一気に顕在化している。これに対し政府は、日雇い派遣の原則禁止、雇用保険の被保険者資格の拡大、雇用促進住宅の提供などの対策を講じようとしている。しかし、問題の本質にさかのぼって考えると、これらの対策はいま起こっている問題に対する弥縫策に過ぎず、問題を根本的に解決しようとするものとはいえない。 これら非正規労働者︵さらには正規労働者を含む雇用システム︶をめぐる問題の本質は、さしあたり次の3点にあるように思われる。 第1に、雇用の不安定さとそれに対する対処法である。2008年の秋以降﹁派遣切り﹂の問題が浮上し、政府は日雇い派遣を原則として禁止する方針を打ち出している。しかし、雇用の不安定さは派遣労働者に限られた問題ではなく、期間を定めて雇用される直接雇用労働者︵有期契約労働者︶にも共通する問