﹁いい仕事してますねぇ﹂の、﹁なんでも鑑定団﹂に出てくる鑑定人、中島誠之助の語りが素晴らしいと思う。いかがわしさと人当たりのよさと、矛盾が見事に同居しているようなあの話芸は、出品されたものが﹁贋作﹂であったときに、出品者を否定するときに威力を発揮しているように思える。 欠けているものと過剰なもの 鑑定を依頼された何かが﹁偽物﹂であったときには、鑑定人の人たちはたいてい、﹁これは本物ではありません﹂と、冒頭に宣言する。宣言したあと、﹁依頼品にはこの要素が欠けています﹂と、本物に比べて、足りないものを指摘する。やりかたとして、これは全く間違っていないけれど、鑑定を依頼した人は、﹁欠けている﹂その依頼品を嫌いになってしまう。 中島誠之助が偽物を鑑定するときには、﹁もしも﹂から入る。 ﹁もしも本物だったら﹂で語りをはじめて、それが素晴らしい価値を持つこと、当時人気があったこと、現存していればすごい