1980年生まれのドイツの哲学者マルクス・ガブリエルは『世界はなぜ存在しないのか』(2013年/邦訳2018年)が世界的なベストセラーになったことで、一躍スターとなった。本書『新実存主義』(2018年/邦訳2020年)はそのガブリエルが「心の哲学」に立ち入って自説を述べながら、それについてジョスラン・マクリュール、チャールズ・テイラー、ジョスラン・ブノワ、アンドレーア・ケルンという4人の哲学者がそれぞれの立場から応答した本である(もっとも、彼らの議論がかみ合っているようにはあまり思えない――ガブリエルの2編の論文と冒頭のマクリュールの導入だけでも十分だろう)。大きくふたつのポイントを挙げておこう。 <1>ガブリエルはもともと、構築主義を批判する立場から「新しい実在論」を掲げたことで名をあげた。構築主義とはごく単純化して言えば、現実なるものは存在せず、たださまざまな解釈や表象を現実と取り違え