20世紀を代表する哲学者とされるハイデガーですが、近年、海外におけるその求心力は急速に低下しているといいます。そのきっかけとなったのが、「黒いノート」と呼ばれるハイデガーの覚書です。そこには、「反ユダヤ主義的」な言辞が含まれている、とされたからです。 母国ドイツでは「触れてはいけない」哲学者となったハイデガー。 しかし防衛大学校の轟孝夫教授は、そうした態度は決めつけであり、ハイデガーのテキストを解釈すると、そう単純に反ユダヤ主義的と言い切れるものではない、と考えます。 そう主張する轟教授に、ドイツ人研究者はどんな態度を示したのでしょうか。 【本記事は、轟孝夫『ハイデガーの哲学 『存在と時間』から後期の思索まで』(現代新書)から抜粋・編集したものです。】 「黒いノート」編者のハイデガー研究者が言ったこと この「黒いノート」の刊行をきっかけとして、いわゆるハイデガーの「反ユダヤ主義」をめぐる研
資本主義とは相いれない 斎藤はベルリンのフンボルト大学に留学し、エコロジーに関するマルクスの視座についての研究で博士号を取得した。2016年には、マルクスの「エコソーシャリズム」に関する学術書を出版。同書の英訳版は、マルクス主義の伝統に基づいた著書に対して与えられる権威ある賞、ドイッチャー記念賞を受賞した。 同時期、環境活動団体のあいだで数十年にわたり議論されていた脱成長理論が、ヨーロッパでブームとなった。斎藤はティム・ジャクソンやギオルゴス・カリス、ケイト・ラワースなどの著作を読みはじめたが、これらの理論家はみな、地球という惑星には限界があり、人類がそれを超えてしまえば大きな混乱は避けられないと主張している。 それまでも、トマス・マルサス以降の思想家たちは人口拡大の限界について語ってきたし、ときにはそこに物議を醸す主張が含まれていた。たとえば、ポール・エーリックは1968年のベストセラー
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