﹁愛国的ではない本を書くな﹂。当局者3人が中国に住む母のもとを訪れ、そう威嚇したそうだ。 ﹁87歳になる母は私の仕事に関心はなく、本のこともよく知らないのに﹂と大阪市在住の現代中国文学者、劉燕子さんは嘆く。 それでも今年、天安門事件から35年を迎えたのに合わせて出版した著書の意義を信じている。﹃不死の亡命者~野性的な知の群像﹄︵集広舎︶だ。 700ページを超える大著。かれこれ20年がかりで取り組んだ労作だ。中国人亡命者の足跡だけでなく、時代や個々の状況などを独自の視点で分析、分類して研究した。 取り上げたのは、米国に逃れた天文物理学者の方励之︵1936~2012年︶、ルポルタージュ作家の劉賓雁︵1925~2005年︶から、天安門事件を経てドイツに亡命した詩人の廖亦武︵りょうえきぶ︶氏︵1958~︶、そして中国国内にとどまるチベット族の作家、ツェリン・オーセル氏︵1966~︶まで約10人。