ひと昔前、「太公望列車」というものが走っていたという。その列車は大阪から紀伊半島を南下して和歌山県の端っこの新宮駅までを結ぶ普通列車。夜に大阪を出発して夜通し走って朝には紀伊半島。おかげで朝釣り愛好者に愛用されていたとかで、釣り人を意味する“太公望”の名をいただいて太公望列車になったのだとか。 つまりは夜行列車なのだが、夜通し普通列車に揺られて朝から釣りにいそしむとは、なかなかの体力だなあと感心するばかり。ひと昔前といっても2000年まで太公望列車は走っていたから、乗ったことのある釣り人もまだまだたくさんいるのだろう。 で、太公望列車が消えてもう20年以上経っていて、夜行普通列車なるものは和歌山どころか日本中を探しても残っていない。いま、紀勢本線には「WEST EXPRESS 銀河」なる観光列車が走っている。が、これを“蘇った太公望列車”などというのはさすがに無理筋だろうか。いずれにしても