奇っ怪なのは、報道である。 多くのメディアが本件を﹁研修医の誤診﹂で高校生が死亡したと報じた。しかし、救急外来受診の段階では患者の容態は安定しており、﹁誤診﹂が死亡をもたらしたとは考えにくい。それをあたかも﹁研修医が見逃したせいで死んだのだ﹂と言わんばかりの、因果関係をほのめかす報道は適切ではない。 誤診は望ましくはないが、誤診をしない医者は皆無だ。誤診は一定の頻度で起きる。超一流のバッターでも全打席でヒットが打てないのと同じで、これは厳然たるファクトである。特に、初対面の患者の容態を救急外来で正確に診断することは、ましてや稀な疾患であるSMA症候群であると言い当てるのは、ベテランの優秀な診療医でも困難であろう。 医療者とメディアのミッションは同じである そういう誤診が﹁ある﹂という前提で、我々医療者は行動する。繰り返しの診療の中で、当初分かっていなかった現象をつかみ取り、最終的には正しい