この時代に日本の漫画作品を愛好する者、そして漫画を描く者たちにとって、﹁藤本タツキ﹂の出現と近年の活躍は、いろいろな意味で“事件”だといえるのかもしれない。 代表作である﹃チェンソーマン﹄︵第1部︶は、﹃週刊少年ジャンプ﹄連載とは思えないほどに悪趣味で残酷な内容と、クールで研ぎ澄まされたセンス、次々と溢れ出す荒々しいまでのイマジネーションが多くの読者を魅了し、多方面に衝撃を与えることになった作品だ。そんな﹃チェンソーマン﹄第1部が終了して、現在Webサイト﹃少年ジャンプ+﹄で連載されている第2部が始まるまでの期間に発表されたのが、143ページの読み切り作品﹃ルックバック﹄だった。 この漫画作品は、発表当時に﹃少年ジャンプ+﹄上で全編無料公開され、その鮮烈な内容が評判を呼んだ。SNSでは同業者の驚嘆の声、嫉妬の念を隠さない称賛も目立ち、﹁トレンド﹂表示されるなど注目が集まった。それほどに漫画