北朝鮮による﹁拉致﹂の発覚は、当時日本の世論を大いに震撼させることになった。 だが、それではこの﹁拉致の発覚後﹂の北朝鮮とどう付き合うか、という問題となると、政府も世論もまだなかなか判然としない状況にあった。 拉致の﹁解決﹂を今後求めていかなければならないのはもちろんだが、かといって北朝鮮との国交正常化交渉をここで打ち切ることも得策とは思えない。 こうした板挟みの中でなんとなく結論を出し難かったのである。 そうした一方、テレビでは連日これまで﹁謎の国﹂とされてきた北朝鮮に関する特集が報道されるようになっていった。 とくにワイドショーでは北朝鮮の人民たちによる﹁マスゲーム﹂などの映像が好んで放送され徐々に﹁恐ろしい国﹂というよりは﹁変な国﹂という認識が世間では共有されるようになっていく。 以前ならばこうした映像に抗議してきた可能性のある社民党や朝鮮総連も、今や自分たちの弁明に追われているため