﹃プレシャス﹄のオフィシャル・パンフレットが届いた。 不思議な映画である。 あちこちの映画祭で受賞しているけれど、どうしてこの映画がそれほど際立つのか、たぶん日本の観客にはその理由がよくわからないのではないかと思う。 それについて書いた。 変わった手触りの映画だな・・・と思った。﹁ふつうの映画﹂と違う。どこが違うのか考えたがわからない。そのまま寝て、一晩寝たら、明け方にわかった。 ﹁男が出てこない映画﹂だったのである。 ﹁看護師ジョン﹂役でレニー・クラヴィッツがクレジットされているけれど、2シーンだけ、台詞もわずか。プレシャスの成長を暖かく見守る﹁いい人﹂という記号的なかたちでしか物語に関与しない。 プレシャスのあこがれの数学の先生も、プレシャスを意味もなく突き飛ばす暴力的なストリートキッズたちもいずれも、人間な深みのない図像として記号的に処理されている。 一家の不幸そのものの原因であり、