自由になりたかった。お金があれば自由になれると思っていた。新卒で社会人になって六年、気づいたら一千万が溜まっていた。けれども、生活はなにも変わらなかった。当たり前だ。たったの一千万だ。一千万ぽっちでなにができる。 たしかに多少大きな買い物をしてもそう簡単にはなくならないけれども、投資をするにはものたりない。会社をやめたら数年でなくなってしまう。大した額だと思ってたけど、溜まってみれば大したことがなかった。気が抜けてしまった。でも、それでもまだ、自由になりたかった。 自由でないと感じるのは、つまり自由がなにかという話になるのだけれど、自分の場合は育った家庭を思い出す時だ。日本での生活をするにあたって常に付いて回る保証人というやつのせいである。 いい大人になって配偶者がいなければ、保証人はいつまでも親だ。機能不全家族育ちにとって、親の名前が随所に出るのはこのうえない苦痛だし、首に紐をかけられて
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