﹁薬を出すしか能がない﹂どの診療科においても、薬の処方に関する基本的な原則は、 ﹁薬の種類はなるべく少なく﹂ ﹁効果のない薬剤は減らして中止に持ち込む﹂ というものです。多くの薬剤をカクテルや七味のように用いる﹁多剤併用﹂は、治療効果が低いとして戒められているのが、現代の精神医学の流れです。 しかし、精神科医に対しては ﹁薬を出すしか能がない﹂ ﹁次々と新しい薬を出してくる﹂ ﹁薬をなかなか減らしてくれない﹂ という批判があるのも事実です。わたし自身も、﹁こういう批判があるのも仕方がない﹂という認識を持っています。 理由は、二つあります。一つには、薬物療法の技量が疑われる一部の精神科医の存在です。初診からいきなり多種類の薬剤を大量に用いる、あるいはどんどん薬剤の種類が増える一方、などです。飲んでいる薬を減量・整理することから治療が始まるケースも珍しくありません。減量しただけで状態が良くなっ