渡辺浩﹃日本政治思想史﹄を読んだ。 かなり面白い。 過去に著者が行ってきた講義が原型となっているためか、初心者にもわかりやすく(こっちは初心者ではないが)、江戸の政治思想(政治だけではないけど)が、よく理解できる良書。 江戸期の﹁思想﹂が現代人にとって奇異なものではなく、ちゃんと相応に納得できる部分があることがわかる。 以下、興味のあるところだけ。 それぞれに自分らしく生きることが、それ自体として良いことだなどとは、儒学者は考えない。(略) ヒトラーがヒトラーらしく生きたことの結果を知らない者がいるだろか ︵16頁︶ これは、儒学の説明において述べられた一節。 自分らしく個性を生かそう、という場合、たいてい善いところしか想起されないが、個性は、必ずしも善いところばかりではない。 とうぜん悪いところは矯正しようとするだろう。 とすれば少なくとも、何らかの﹁善﹂を想定せざるを得ないのは確かだ。