――私の母の友人で、北海道に住むKさんの話。 昨年のお盆のこと。Kさんの二十歳になる一人娘が帰省してきた。大学進学で上京し、一人暮らしを始めてからはバイトや課題で忙しいからと、夏冬の長期休暇にも帰ってこず、顔を見るのは二年ぶりだった。 空港で待っていたKさんは、久しぶりに会う娘の表情が硬く、伏し目がちで、夏だというのに黒い長袖のニットを着ているのもあってひどく暗い雰囲気だったのに驚いた。 元々、人懐っこく明るい娘だったのだ。 帰りの車の中でも娘はほとんど喋らなかった。 ﹁そうだ、昔よく一緒に行ったお風呂屋さんに、久しぶりに行ってみようか﹂Kさんが後部座席を振り返り、娘がぽたぽたと大粒の涙を流していることに気づいた。 家に着き、Kさんは言った。﹁何かあったなら教えて? お母さんはあなたの味方だから﹂ すると娘は泣きじゃくりながら、着ていたニットを脱いでKさんに背中を見せた。 ﹁私のこと、嫌
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