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要旨 バイデン米政権下で金融・財政政策のフル稼働が続いたことにより、米国経済は世界に先駆けて金融政策の正常化に向かいつつある。背景には、イエレン財務長官とパウエルFRB議長が高圧経済政策を意識してきたことがある。高圧経済論は、経済の過熱状態を暫く容認することで、格差問題の改善も含めて量・質ともに雇用の本格改善を目指すもの。 著名経済学者オークン氏が1973年に執筆した論文では、高圧経済によって労働市場で弱い立場にある若年層や女性雇用に恩恵が及び、経済全体の生産性も高まることが示されている。リーマンショックやコロナショック等の深刻な不況が失業者の人的資本の毀損等を通じて潜在成長率も低下させたことからすれば、高圧経済は潜在成長率も高めることになる。 海外で進んでいるマクロ経済政策の新たな見方では、成長を促す分野や気候変動対策などへの効果的な財政支出による成長戦略が新たな経済・財政運営のルール。
要旨 2023年10-12月期時点の政府債務残高/GDPを見ると、コロナショック前の水準まで低下している。そして低下した要因を分解すると、「経済成長率」と「インフレ率」要因の押し下げ幅が、「財政収支要」因の押し上げ幅を大きく上回っており、また経済成長率とインフレ要因のうちの2/3近くがインフレ要因であることがわかる。 政府がPB目標を掲げてきた背景には、政府債務残高/GDPの上昇を抑制することがあるが、足元では日本でもインフレが定着しつつあり、財政の持続可能性にもその分余裕が出てきている。すでに日本経済にインフレが定着しているのであれば、多額の政府債務の負担が実質的に軽減されることで、財政リスクを高めずに将来の成長に向けた財政支出の自由度が高まり、拙速な財政引き締めリスクを軽減できる。 内閣府が2024年1月に公表した「中長期の経済財政に関する試算」のインフレ目標が達成される成長実現ケース
要旨 オルタナティブデータを用いて、足元の都道府県別募集賃金の上昇率を確認したところ、九州地方・東北地方の伸びが目立っている。外資の進出や半導体投資の活況が地方の賃金上昇を促しているようだ。一方で、円安や半導体ブームに一服感が生じれば国内賃金にも影響する可能性が高い。2024年度の春闘賃上げ率は歴史的な高さとなりそうだが、そのすべてを中長期のトレンドと見做すのは時期尚早と考える。 目次 賃金は「どこで」上がっているのか? 外資進出・半導体投資の活況が地方の賃金上昇を支えている模様 賃金は「どこで」上がっているのか? 来年度の更なる賃金上昇に向けた期待が高まっている。2023年度の春闘から、国内の賃金上昇率のトレンドには明確に変化がみられるようになってきている一方で、地域別の賃金状況の分析は多くはない。この背景の一つはデータの制約にあると考えられる。政府の賃金統計である厚生労働省公表の毎月勤
要旨 23年に日本のGDPがドイツに抜かれる主因の中でも、特筆すべきは日本の国内自給率が低下してしまったこと。ドイツは2000年代以降、企業が国内で活動しやすい環境を作るために、政府当局が積極的な政策を講じてきた。これに対し、日本では円高デフレを長期間放置してしまったがゆえに、逆に企業の海外流出を加速させるような状況を作り出してきたことがあげられる。 ドイツの経常黒字は主に貿易黒字と所得収支によって成り立っており、特にGDPに含まれる貿易収支への依存度が高いことが特徴。対して日本の経常黒字は、GDPに含まれない証券投資や直接投資の収益による所得収支によって経常収支の黒字を維持している。背景には、ドイツでは2000年代以降、対外・対内とも直接投資残高がGDP比で増加したことである。日本がドイツと大きく異なるのは、対内直接投資が著しく少ない点である。 ドイツは2000年以降にユーロ統合で経済の
要旨 海外において経済政策の新た理論として台頭しているのが「財政赤字の適温理論」であり、財政には政府債務と財政赤字の望ましい組み合わせを示す「適温領域」が存在することを示す。 2019年時点の日本は、財政赤字を減らすとむしろ債務が増加する状況にあり、財政赤字を増やすことで政府債務が減少する状況が、財政赤字/GDPが3%弱に達するまで続く。その後は反転して財政赤字拡大とともに政府債務も増加するようになり、政府債務残高/GDPが223%になる時点で財政赤字/GDPは3.5%で最大域に達し、その点よりも債務を増やすと持続可能な財政赤字は減少し、最終的に財政赤字をゼロにしなければならない金利>名目成長率の状況に到達する政府債務残高/GDPは446%になる。 国債は日本国内に居住する民間部門の資産になるため、納税者が償還財源を負担すべき債務として国債が将来世代に引き継がれるということは、民間が保有す
目次 1.人助けに関する調査で日本はまたもや最下位に 2.本当は席を譲ってほしいし荷物を持ってほしい 3.必要な手助けはおこなわれているのか 4.最下位を脱出し「おもてなし」あふれる国へ 1.人助けに関する調査で日本はまたもや最下位に 過去1か月間に「助けを必要としている見知らぬ人を助けた」かどうかに関する調査が、イギリスの団体によって世界各国で毎年実施されている。この調査については以前にも取り上げ、日本は2009~2018年の平均でも、2020年単年でも、全世界の中で最下位だったという結果を紹介した(注1)。その後の2021年の調査でも、日本は最下位から2番目にとどまっている(図表1)。 先ごろ公表された最新版の調査報告(2022年に調査、2023年に公表)によると、日本は142か国の中でまたもや最下位(21%)であり、全世界の平均(60%)を大幅に下回っている。日本は見知らぬ人を助ける
要旨 円の総合的な実力が過去最低を更新したと騒がれている。そこで、実質実効レートが統計開始の1970年1月から足元までにどれだけ名目レートとインフレ率格差の変化があったかを計算すると、名目レートは3倍以上増価しているのに対し、相対的物価は1/3以下の低水準になっていることになる。つまり、実質実効為替レートの低下は名目レートの円安というよりもインフレ率格差が主因であり、実質実効レートの動きのみで判断すると、あたかも日本円が減価しているとミスリードしてしまうことにもなりかねない。 実質実効為替レートがピークだった1995年頃から円安基調に転じた時期は、日本経済がデフレによる長期低迷に入った時期と重なる。これ以降に社会に出たロストジェネレーションを中心に、日本人は将来に対する成長期待が持てていない。このデフレマインドが海外とのインフレ格差を作り出したといえる。 日本経済がインフレ率格差克服するに
要旨 IMF(国際通貨基金)の2023年10月の予測データでは、日本が経済規模を縮小させている。主因は円安傾向が続くことだ。2019~2023年の期間では、米国、EU、インド、中国などが軒並み経済規模を膨らませ、日本だけが極端に規模を縮小させている。日本と海外の成長格差がこれだけ大きいと、日本企業の投資資金は日本から海外へと逃げていく。 目次 追い付かれ、追い抜かれ 対米規模の格差 中国、EUにも離される 外に逃げていく企業の投資資金 追い付かれ、追い抜かれ 日本の経済規模は、ドル表示で計算すると驚くほどに下がっている。昨今、日本ではインバウンドが都市に溢れ、彼らは活発に買い物している。その旺盛な購買力をみるにつけ、強烈な内外格差が生じていることを感じる。ドルで円建ての商品・サービスを購入すると、物価が極端に下がっているということだろう。 この構図を1国全体でみるとどうなるだろうか。日本全
要旨 10月6日に発表された8月の毎月勤労統計は、現金給与総額が前年比1.1%と鈍かった。ほとんど報道では、名目賃金のプラスよりも実質賃金のマイナスが強調される。政府や日銀は、どうしていずれ実質賃金のマイナスがプラスに転化していくものだと説明しないのか。その辺りの真意を考えてみた。 目次 いつも酷評される実質賃金 いずれ実質賃金はプラスになる 実質賃金が伸び悩む理由 日銀の要因 やはり2%目標は高すぎる いつも酷評される実質賃金 筆者の好きな本に「残念な生き物」の図鑑がある。生き物の中には、とても好ましい特徴があるのに、それが上手に役立てられていない者がいる。それが「残念だ」と言われる。同様に、経済統計の中にも、とても「残念な統計」がある。厚生労働省「毎月勤労統計」である。 2023年8月の現金給与総額は前年比1.1%とプラスの伸びであった。時系列の推移は、2%台から1%台へと鈍化してきて
要旨 長期的な為替レートの水準として参照される「購買力平価(PPP)」と比べると、足下の市場実勢レートは3割強円安方向で推移している。 新興国通貨の市場実勢レートはPPP対比で割安な水準にあり、日本円が先進国通貨としての位置づけを保てない場合、足下のドル円水準が中長期的にも維持されるリスクがある。 一方、主要先進国通貨における市場実勢レートとPPPの大幅な乖離は2~3年しか持続しない傾向にある。先進国通貨としての日本円のポジションが不変である場合、ドル円レートは2024~2025年にかけて120円近辺まで円高が進行する可能性が示唆される。 為替レートは金利差、貿易・経常収支、潜在的な経済力などの多様な要因によって変動するが、長期的な為替レートの水準を考える際には「購買力平価(PPP: Purchasing Power Parity)」を参照することが一般的だ。PPPとは「為替レートは異なる
要旨 内閣府が公表するGDPギャップがプラスに転じたとしても、真の意味での需要不足は解消されたとはいえない。実際に2007年度や2017年度にGDPギャップが+2%近くまで到達したが、当時に供給力の天井を上回るほど経済が過熱していたとは考えにくい。 内閣府もGDPギャップの推計に当たっては、潜在GDPを「経済の過去のトレンドからみて平均的な水準で生産要素を投入した時に実現可能なGDP」と定義しており、供給力の天井からの乖離を示したものではない。 日本のインフレ率とGDPギャップの関係を見ると、GDPギャップに2四半期遅れてインフレ率が連動する。そして、日本のコアCPIインフレ率とGDPギャップの関係をより詳細に見ると、CPIコアインフレ率+2%に対応する内閣府GDPギャップは+4%程度になる。 すでに足元のコアインフレ率は+3%前後の水準にある。しかし、そのうち+2%ポイント程度は国内需給
要旨 英国ではサッチャー時代に民営化された大手水道会社が経営難に陥っている。巨額の投資負担や利払い負担の増加に苦しんでおり、既存株主に追加増資を求めたが、資金調達が難航している。事業再建を進めてきた最高経営責任者の突然の辞任と、政府と監督機関が国有化の可能性を検討していることが明るみに出て、関連資産の売りが加速した。再国有化の阻止を目指す既存株主が追加支援の方針を発表、追加の財政支援に否定的な政府も税金投入による水道会社の救済には慎重とならざるを得ない。来年の総選挙で政権奪取が確実視される労働党は、前回の総選挙で前党首が掲げた鉄道や公益企業の国有化の公約を撤回したが、今回の問題発覚を受けて何らかの公的関与の強化を検討する公算が大きい。サッチャー時代以来の英国の民営化モデルが軌道修正される可能性がある。 「小さな政府」による英国経済の活性化を目指したサッチャー元首相は、1970~80年代にか
要旨 5月15日の経済財政諮問会議では、清滝信宏プリンストン教授が、岸田首相や植田総裁が出席する中で、金融政策に対して非常に示唆的な発言をしていた。清滝教授は、まだ日本人が誰も受賞したことがないノーベル経済学賞で、存命中の学者の中で最も近いところに居る候補者とされる。世界レベルの知性としても知られるだけに、筆者はその人物が公式の場で何を語ったかに注目している。 目次 刺激的な発言 清滝教授の発言内容 経済成長についての苦言 (※)本稿は、ロイター通信に寄稿したものを、加筆・修正した内容である。 刺激的な発言 5月15日の経済財政諮問会議では、清滝教授が、「インフレ率が1~2%程度に定着すれば、量的・質的緩和は解除するのが望ましい」と語った。この発言は、同席している植田総裁に向けられたものである。日銀は安定的に2%と宣言しており、実質的には2%を割り込まないインフレ率を目指しているから、清滝
目次 1.ビジネスに活用されるマインドマップ 2.マインドマップAIの実態 3.マインドマップAIのメリットとデメリット 4.マインドマップAI,の可能性と展望 1.ビジネスに活用されるマインドマップ マインドマップは、情報を視覚化し自分の思考を整理するための手法で、1つのアイデアや概念から多くの異なるアイデアや概念へと思考を広げていくという「放射思考」につながるものである。これにより、テーマに関する情報を放射線状に分類し、項目やジャンルごとに思考を進めていくことができる。その用途はアイデアの生成、問題解決、戦略策定、事業企画など多岐にわたり、ビジネスにおける重要なツールの1つとなっている。 マインドマップの視覚的な形式は、脳の自然な思考プロセスに適合しており、脳内のイメージを直接的に図化することで、より効果的な情報の理解、組織化、記憶を可能にする。それらによって自身の思考を整理することが
要旨 国の一般会計税収が大幅に増加している。足元の月次税収の趨勢を踏まえ、2022年度は72兆円程度への着地を予想。22年度税収は当初予算時点で65.2兆円のところ、昨年11月の補正予算時点で68.4兆円と上方修正がなされたが、ここから更なる上振れ着地が予想される。 背景にはインフレ・円安、賃金・雇用の回復などがある。足元で特徴的なのが景気の振幅に影響されにくい消費税が大きく伸びている点。およそ40年ぶりの物価急上昇は、税収にもこれまでにない変化をもたらしている。 22年度税収は大幅増加へ 税収の増加が続いている。財務省が3日に公表した「租税及び印紙収入、収入額調」によれば、2022年度分の一般会計税収額の累計値(2023年2月まで)は51.2兆円と、過去最高税収となった21年度(同時期の累計値:46.8兆円)を大きく上回っている。税収は2021年度に20年度から+6.2兆円の大幅な増加を
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