かつて自転車の車軸についていた、カラフルな輪状のブラシを覚えていますか? その名は﹁ハブ毛︵け︶﹂。どことなく昭和の香りが漂うその商品を、愛知県津島市の小さな会社が作っています。全国でも希少なメーカーなのですが、数年のうちにも製造をやめるというのです……。 ﹁ハブ毛を作るところが見たいって? そんなもの、見せるようなものじゃないよ﹂ 津島市にある自転車問屋﹁三優商会﹂の代表、佐藤昌利さん︵74︶は言った。 自転車の車軸﹁ハブ﹂に巻く﹁毛﹂だからハブ毛。用途は車軸の汚れ落としとされるが、﹁そこの汚れなんて誰も気にしない。小売店がお客さんへのサービスの一環でつけていた飾りですよ﹂と佐藤さん。 誰が最初にハブ毛を作り始めたのかは分からないが、佐藤さんが始めたのは1970年代。当時、ハブ毛を隣町の業者から仕入れ、卸売りをしていたが、オイルショックで品薄に。﹁仕入れのめどが立たなくなって、自分で作ろ