寄稿 作家・中村文則さん 僕の大学入学は一九九六年。既にバブルは崩壊していた。 それまで、僕達︵たち︶の世代は社会・文化などが発する﹁夢を持って生きよう﹂とのメッセージに囲まれ育ってきたように思う。﹁普通に﹂就職するのでなく、ちょっと変わった道に進むのが格好いい。そんな空気がずっとあった。 でも社会に経済的余裕がなくなると、今度は﹁正社員になれ/公務員はいい﹂の風潮に囲まれるようになる。勤労の尊さの再発見ではない。単に﹁そうでないと路頭に迷う﹂危機感からだった。 その変化に僕達は混乱することになる。大学を卒業する二〇〇〇年、就職はいつの間にか﹁超氷河期﹂と呼ばれていた。﹁普通﹂の就職はそれほど格好いいと思われてなかったのに、正社員・公務員は﹁憧れの職業﹂となった。 僕は元々、フリーターをしながら小説家になろうとしていたので関係なかったが、横目で見るに就職活動は大変厳しい状況だった。 正社員
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