そのベンチは﹁最悪いす﹂と呼ばれている。肘掛けが付き、一人分のスペースに仕切られ、傍らには荷物を置く台もある駅のベンチ。一見、座る人に配慮している。でも…。 ﹁最悪﹂と名付けたのは貧乏旅行を好む旅人たちだった。ろくに宿にも泊まらず、夜汽車で移動し、時に無人駅で寝る。1990年代の初め、そんな旅行者を閉め出すかのように、ベンチに肘掛けが付き始めた。これでは横になれない。 ﹁嫌な感じですよねえ﹂。各地を旅しながらミニコミ誌﹁野宿野郎﹂を編集している横浜出身の野宿愛好家・かとうちあきは言う。﹁でも、無理やり体をはめ込んで寝てる人もいますね。克服しているようで、ちょっとうれしい﹂。旅人は静かに闘っている。 ◇ 建築史家の五十嵐太郎・東北大大学院教授は、肘掛け付きベンチのような存在を﹁排除オブジェ﹂と捉え、背景にある﹁排除の思想﹂を読み解く。例えば、駅や公園にある奥行きの狭い腰掛けは、長時間
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