﹁俺、市議会議員の立候補することになったから﹂ ひさしぶりにかかってきた父からの電話。その声はやけに明るく、あまりに突然で意味不明であった。それに対して返した言葉はこうだ。 ﹁いいんじゃない。人生一度きりだしやりたいようにやったらいいんじゃない。協力できることはするよ。﹂ なんの根拠もなしに父のサポートをあっさりと引き受けていた自分がいた。わたし自身、人と違う生き方を何年も前からやっているからか、驚きはしたものの﹁ええやん父﹂くらいにしか思っていなかった。世の中をなめてる娘の67才になる父の挑戦だった。 ここだけみると﹁親子仲がいいんだな。これからあたたかい物語が始まるのかな﹂そう思うかもしれない。しかし、選挙戦というのはそんなにやさしいものではなかった。辛酸を嘗める物語が始まる。 母親の悲痛な叫び新潟から実家の千葉に帰ることができたのは選挙公示日︵2019年4月14日︶の1週間前だった。
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