労働者派遣法の改正案が国会で審議入りしたことで、派遣労働のあり方をめぐる議論が再燃しています。法案を提出した安倍政権は﹁身分の不安定な派遣社員の待遇改善や正社員化につながる﹂と力説しますが、野党は逆に﹁派遣を増やすだけだ﹂と反発しています。 とはいえ、この法案が世論を二分する論争になっているわけではありません。当の派遣社員も、﹁どうでもいい﹂﹁関心がない﹂と突き放しています。 この徒労感はどこから来るのでしょうか。それは政治家やメディアが、問題の本質から目を背けているからです。 ﹁派遣﹂という働き方が悪いわけではありません。それが政治問題になるのは、日本の社会では派遣が﹁非正規﹂とされ、同じ仕事をしていても﹁正規﹂の社員と待遇が異なるからです。 ILO︵国際労働機関︶は同一労働同一賃金を基本的人権としており、﹁正規﹂﹁非正規﹂の区別は現代の身分制と見なされます。﹁日本は前近代的な差別社会だ