Photo by PhoTones_TAKUMA from Flickr 世間を戦慄させた殺人事件の犯人は女だった――。日々を平凡に暮らす姿からは想像できない、ひとりの女による犯行。彼女たちを人を殺めるに駆り立てたものは何か。自己愛、嫉妬、劣等感――女の心を呪縛する闇をあぶり出す。 [第13回] 兵庫・菅野村老婆殺人事件 戦後初めて、死刑を“執行”された女性囚は日本閣事件の小林カウだ。しかし戦後初めて、死刑判決が“確定”したのは山本宏子である。 宏子は大正4年︵1915年︶兵庫県菅野村︵現・姫路市︶に生まれた。私生児だった宏子だが、結婚前は三味線や舞踊などを嗜み、看護婦の職を持った職業婦人でもあった。その後見合いで婿養子を貰い、看護婦を辞め家庭に入る。しかし、この結婚から宏子の人生は大きく変わっていく。夫は病弱だったが7人の子どもに恵まれ、うち3人は幼児期に死亡したが4人は元気に成長してい