レビューとキリスト教に関するtweakkのブックマーク (5)
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﹁不可知の雲(The Cloud of unknowing)﹂は、14世紀末中世の英国で書かれた瞑想のガイドブックあるいは指導書である。かなり割り切って言えば、瞑想のハウツー本である。 なんのための瞑想か。神を知り、原罪の苦しみを軽減するいうことだが、現代人にとって精神的に得るところ部分だけ取り上げれば、つらい気持ち、鬱、怒りといった心に安らぎをもたらすことである。その点では、禅やその他の宗教の瞑想とそれほど変わらないとも言えるだろうし、道元の禅によく似ているとも思った。 当然、なんともスピリチュアルな本であるし、実際にキリスト教神秘主義の有名な著作でもある。作者の名前は伝わっていない。匿名ということだが、これは謙遜として名を残さなかったということなのだろう。 この本を読むきっかけは偶然だった。先日、スワミ・ラマの自伝︵参照︶を読んで、近代インドにおけるキリスト教神秘主義を知り、その関連の
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グノーシス主義の思想―“父”というフィクション 作者:大田 俊寛春秋社Amazon とてもよいオウム本を書いた大田の処女作で、グノーシス主義にも︵﹃ヴァリス﹄とか読んだので︶興味あったので読んで見た。 オウム本と同じで、とてもすっきりしていて明快。﹁父親﹂というものの観念性を元に、その観念性を逆手にとって承認を通じた納得が生まれ、それが社会にも拡大されて社会が生じ、というクーランジュの発想︵﹃古代都市﹄うちにあるのに読んでないや︶から始まって、いろんなグノーシス文献を手際よくまとめて整理していくのは見事。最後は本当の神様をある種のフィクションとして認識しつつも、それを鏡として己を見直し、そして虚構性を敢えて受け入れることで社会性を構築するような発想なんだというところにそれがたどりつくのは、読む側にも﹁そうか!﹂という達成感があってすばらしい。そしてこれまでの論者の議論をロマン主義的と切って
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聖書には含まれていないイエス・キリストの教えが存在するとしたら、どう思うだろうか。キリスト教徒なら﹁そんなのは悪い冗談でしょ。聖書は聖霊の導きで書かれているのです﹂と答えるかもしれない。だが、聖書に含まれている、イエス・キリストの生涯を記す4つの福音書︵マルコ、マタイ、ルカ、ヨハネ︶以外に、本当のイエス・キリストが語った言葉を収録する別の福音書がかつて存在し、そしてそれが今の聖書に収録されている四福音書よりも真実を伝えるとしたら、どうだろうか? いや、何をもって﹁真実﹂だというのかという議論にもなるかもしれない。本書、﹁禁じられた福音書 ― ナグ・ハマディ文書の解明﹂︵参照︶は、その問題を本質的に扱っている。 訳本の表題﹁禁じられた福音書 ― ナグ・ハマディ文書の解明﹂は日本人に向けてよく練られている。確かに本書では、現在のキリスト教からは禁じられた、異端の福音書が議論されている。キリスト
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﹁捏造された聖書︵バート・D・アーマン︶﹂︵参照︶はいずれ読むんだろうなと思っていたが、ふと思い立ったように読んでみた。面白かった。 話は、聖書の本文批評学︵textual critic︶を一般向けにしたものだ。聖書というのは信仰者の多くは神の言葉だと理解しているしそれはそれで信仰の問題だが、信仰といった部分を除いて考えるなら、普通に人間が書いた歴史文書であり、その編纂の歴史というものがある。本書はその新約聖書の部分をまとめたもので、こういうと嫌われるかもしれないが、欧米の知識人と向き合うことがある日本の知識人ならこの程度の内容はざっとごく常識として知っておいたほうがいい。その意味では必読書と言えるかもしれない。日本の現代知識人は奇妙に歪んだ、キリスト教に対する優越心みたいなものを持っていることがあるようだけど、そんなのは欧米人には通じない。むしろきちんと彼らの背負い込んだ知識を理解したほ
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﹁極東ブログ: [書評]カラマーゾフの兄弟︵亀山郁夫訳︶﹂︵参照︶で扱った新訳﹁カラマーゾフの兄弟﹂の訳者がその訳業に重ねて、満を持して発表した続編説であり、現在水準の研究成果も反映し、穏当とはいえないにせよ、さすがに否定しがたい圧倒的な想像力をもって書かれている。編集者の女性もものすごいお仕事をされたようだ。新訳カラマーゾフの兄弟の魅了された人にとっては必読書になるだろう。 ただ私は、亀山の想定はもっとも大きな線で間違っていると思った。ブログなので夜郎自大な話になるかと思うし、別の書評のようにあえて韜晦に表現しておくほうがいいのかもしれない、が、率直に書いておきたい。 私の読みが間違っているということは大いにありうるというか、その留保は当然のこととして、なぜカラマーゾフの兄弟という小説が書かれたのか、この小説のテーマは何かということが、﹁﹃カラマーゾフの兄弟﹄続編を空想する︵亀山郁夫︶﹂
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