私はよい書評家ではない。駄文を書く。よい読書家でもない。私は若い頃は自分を読書家だと思っていた︵渡辺一夫全集とか読んでいたし︶が、歳を取るにつれ、そう思わなくなった。実際、たいして本は読んでいない。恥じる。それでも、本を読むことは生きる上でなんとも、のっぴきならぬことにはなった。このあたりの思いは、人それぞれ多様だろうが、それでも本に取り憑かれた人生というものがあり、私もその一人のはしくれではあるのだろう。 くだらない話だが、本に憑かれた人間は人口の1%くらいだろうか。日本人1億2千万人だから、1%でも100万人を越える。そんなにいるわけはない。まともな本の出版部数は3千程度である。資本主義の天国と地獄のアマルガムで出版人の魂を塩梅よく苦悶させる数値だ。山本夏彦が言うように本というものには困ったことにいくばくか魂が籠もる。魂が強く籠もれば読まれて千人。その千人が数分野生息して、日本の読書人