就寝中の息子の胸を刃物で刺し、命を奪った父に告げられたのは、執行猶予付きの判決だった。東京地裁立川支部で先月下旬にあった裁判員裁判。裁判長は﹁相当やむを得ない事情があった﹂と述べた。ともにプラモデル作りが好きで、二人三脚で大学受験に臨むほど仲が良かった父子に、何があったのか。 三男︵当時28︶への殺人罪に問われたのは、東京都八王子市の父親︵65︶。黒のスーツに青紫のネクタイを締め、法廷に現れた。事件までは、監査法人の会社員。同僚からは﹁まじめ﹂﹁誠実﹂と思われていた。 事件の経緯を、検察の冒頭陳述や父親の証言からたどる。 約10年前、三男は都立高2年のとき、精神の障害と診断された。通信制高校に移るなどしたが、浪人生活を経て大学にも進学。充実した学生生活を送った。卒業後はガス会社に就職した。 しかし、次第に変化が生じる。仕事がうまくいかず、職を転々とした。﹁自分をコントロールできない﹂と本人