絵を見ることは、とてもたやすいことであり、同時にとても困難なことでもある。 眼を向ければ絵はそこにある。だが、小説や音楽や映画のように、文字や音や映像の流れに身を任せられるものではない。多くの場合、絵のなかに明確な始まりや終わりもない。画面はいつでも一挙に見る者の前にあり、視線はいかようにも動かせる。加えて、印象派の絵画に顕著なように、絵との距離によって見え方も変わる。 とはいえ、神話や聖書のエピソードを描いた絵のように、題材や描かれた物語が明確であるならまだしもだ。﹁ああ、あの物語か﹂と、一旦は了解することができるから。しかし、これがピカソの﹁ゲルニカ︵Guernica︶﹂︵1937年︶ならどうだろう。 実物でも複製でもネット上の画像でもよいので、まずは虚心坦懐に﹁ゲルニカ﹂をじっくりとご覧いただきたい︵本書の巻末にも複製が折り込まれており、これを広げると絵を見ながら本文が読めるよう配慮
![誰でも知ってるあの絵の意味は~『ゲルニカ』 宮下誠著(評:山本貴光):日経ビジネスオンライン](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/05f492a9ba706b05ca8fd61b1840b099fb59fdc9/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fbusiness.nikkeibp.co.jp%2Fimages%2Fn%2Fnbo%2F2011%2Fcommon%2Fnbologo_ogimage.png)