▼日本軍に漂っていた﹁狂気﹂の正体 ~悪魔のエリート参謀・辻政信が地獄に引きずり込んだ 誰も辻には逆らえない 半藤一利さんが﹁絶対悪﹂と評した元陸軍参謀・辻政信の話をつづけたい。私が会った、ある元参謀はこう語っていた。 ﹁辻さんは強いですよ。徹底的に言うから。ちょっとでも消極的なことを誰か言うと、どやし上げるから辻さんの前ではみんなまともにものを言わない。軍司令官だって師団長だってみんな黙ってます。すると︵軍の方針が︶辻さんの言う通りにだんだんなっていくんですよ﹂ その典型例を挙げよう。1939年のノモンハン事件︵モンゴルと満州の国境で起きた日本軍とソ連軍の衝突︶である。 このとき辻は関東軍︵=満州占領軍︶司令部の参謀だった。肩書の上では中堅の少佐にすぎない。が、彼の強気一辺倒の議論は関東軍を引きずり、国境紛争を一気に拡大させた。 事件の最中に関東軍司令部に急行したモスクワ駐在武官の大佐・