タブーは、それがタブーであると口にするのも憚られるからこそ、タブーなのである。それは、必ずしも隠蔽されたものばかりではない。むしろタブーと呼ばれるものの多くは、誰もが日常的に知っているものなのだ。我々は、タブーを前にしたとき、あたかもそこにタブーなど﹁ない﹂かのように、振る舞わなければならない。その場合には、特定の﹁文脈﹂があるのが普通である。﹁文脈﹂を越えて、それが語られることはない。その﹁文脈﹂以外で語られたとき、たちまちそれは﹁タブー﹂の正体を現すからだ。 アレクサンドル・ソクーロフ監督のロシア映画﹃太陽﹄をようやく見ることができた。敗戦前後の昭和天皇を主人公にした作品で、日本では当初、公開不可能と言われていた。それが関係者の尽力で、単館ロードショーの形で都内でひっそりと公開された。しかしそれだけでは終わらず、噂が噂を呼び、作品の完成度の高さもあって、単館公開としては異例のヒットにな