著名人の顔や言動に文句をつけ、寄ってたかってネットで叩く。そんな様子を誰しも目にしたことがあるでしょう。そうした悪意に満ちたコメントを見て、ついおもしろがってしまうこともあるかもしれません。この認めがたい感情を、何と呼ぶのでしょうか。 歴史学者のティファニー・ワット・スミスによれば、ネットが不可欠の現代人は﹁他人の苦しみ﹂をエンターテイメントのように楽しむ﹁シャーデンフロイデの時代﹂を生きていると言います。18世紀ヨーロッパには﹁brûler les chats︵猫焼き︶﹂という催しがありました。猫を生きたまま篝火へ投げ込むもので、人々は苦しむ猫の姿を楽しんでいたそう。この慣習はベルギーやフランスを中心に、各地へ広がりました。 そんな催しがあった当時、苦痛や恐怖に悶える他者を目にしたときの﹁高揚した状態﹂を表すドイツ語の言葉がありました。これが﹁schadenfreude︵シャーデンフロ