ラテン語訳中原中也 |
口語的な文体や擬音語を巧みに利用した中也の詩は、外国語に訳しにくいものの最右翼だと思います。はっきりいって自分のラテン語なんて、羅訳が出来るレベルには程遠いのですが、まぁ、でも、訳しちゃいけないという法律があるわけでもなし。表現の自由ってやつですな。でもって訳しちゃったもんはしょうがない。ネットで公開するのみよ、ってなわけで、酔っ払った勢いで作ったのがこのファイルにござりまする。
一つのメルヘン | Apologus |
秋の夜は、はるかの彼方に、 小石ばかりの、河原があつて、 それに陽は、さらさらと さらさらと射してゐるのでありました。 |
quadam nocte autumna in terra longinqua erat flumen aridum glareosumque cui sol sussurus sussurans lucebat. |
陽といつても、まるで硅石か何かのやうで、 非常な個体の粉末のやうで、 さればこそ、さらさらと かすかな音を立ててもゐるのでした。 |
sol siliquae vel pulveribus substantiae durissimae compar erat itaque sonum parvum sussurans spargebat. |
さて小石の上に、今しも一つの蝶がとまり、 淡い、それでゐてくつきりとした 影を落としてゐるのでした。 |
nunc papilio supra glaream veniens faciebat umbram hebetem sed definitam. |
やがてその蝶がみえなくなると、いつのまにか、 今迄流れてもゐなかつた川床に、水は さらさらと、さらさらと流れてゐるのでありました…… |
et cum abiisset papilio, nescio quando, in flumine qua fluxerat nihil aqua sussura sussurans fluere incepit... |