仮想化道場

サーバープロセッサのターニングポイントになる? 「Xeon Scalable Processor」(前編)


 711Intel Xeon Scalable ProcessorXeon  Xeon ScalableXeon E7/E5/E31

 Xeon Scalable
Xeon Scalableのチップ写真。Platinum~Bronzeまで同じパッケージ、ピン、ソケットが使われている(米国Intelの広報写真より)

ややこしいXeon Scalable Processorのラインアップ

 わかりやすいところから説明すると、Xeon Scalable Processorと以前のXeon E7/E5の差は、ソケットにある。Xeon Scalableでは、すべてのプロセッサがLGA3647(Socket P)を採用している。

 チップセットも、Xeon E7/E5とは異なりC620シリーズ(開発コード名:Lewisburg)が使われている。サーバーベンダーにとっては、同じチップセットを使って、2/4/8ソケット対応のサーバーを設計・開発できる点がメリットという。つまり、設計・開発コストがかかる4/8ソケットサーバーを、今までよりもリソースをかけずに設計・開発できるようになるわけだ。

Xeon Scalableは、前世代のXeon E7とE5を統合した製品だ。別々のプラットフォームだったものを1つにまとめている(日本での記者発表会のスライドから、以下、記載ない場合は同じ)
データセンターは、クラウド、ネットワーク(NFV/SDN)、AI、HPCなど、コンピュートパワーを使用する用途へとシフトしている
さまざまな事業者が必要とするワークロードを実現するため、プロセッサを開発
Xeon Scalableは、今後必要となる膨大なコンピュートパワーとさまざまなワークロードに対応したプロセッサだ
Intelでは、Xeon Scalableはこの10年間で最も大きな進化だとしている。実際、Xeon E7とE5を統合したメリットは大きい

 ただしXeon Scalableでは、それまでのXeon E7/E5のラインアップを統合し、ブランドとをPlatinum、Gold、Silver、Bronzeの4つに分けたが、サポートしているソケット数で単純に分けたわけではないため、直感的にはかえってわかりにくくなった。

 Intelでは、パフォーマンス(動作クロック、コア数など)の総合的な要素でブランド分けされていると説明していて、例えばXeon Platinum 8100では、2/4/8ソケットのサーバーが構築できる(8ソケット以上のサーバーは、メーカーが独自のチップセットを開発すれば可能)。

 Goldに関しては、2/4ソケット対応のXeon Gold 6100シリーズ、2ソケットだけに対応したXeon Gold 5100シリーズに分かれている。Xeon Silver 4100とXeon Bronze 3100は、2ソケットまでの対応だ。

Xeon Scalable5Gold61005100PlatinumGold 6100Gold5100SilverBronze使Xeon ScalableProduct Brief

 このようにソケット数からの視点では、これまでと異なった分類方法になるためわかりにくく感じる。

 コア数で見ると、Platinum 8100は最大28コア、Gold 6100/5100は最大22コア、Silver 4100は最大12コア、Bronze 3100は最大8コアとなっており、この視点の方が比較的わかりやすいかもしれない。

各モデルで、サポートされているメモリスピード、AVX-512のFMAの数、UPIの数などが異なる(Xeon ScalableのProduct Briefより)

 とはいえ個人的には、今回のブランド戦略は非常にわかり難いと感じている。例えば、Xeon Platinum 8100で4ソケットサーバーを構築するのと、Xeon Gold 6100で4ソケットサーバーを構築する場合で、パフォーマンスにどのような差があるのかよくわからないからだ。PlatinumやGoldといった貴金属名を付けるなら、もっとシンプルにわかりやすくしてほしかった。

Xeon Scalableの型番は、モデル名(Platinumなど)と番号から構成される(米Intelの発表会資料より)
Xeon Scalableは、Platinum、Gold、Silver、Bronzeの4ブランドに分かれている
Platinum 8100シリーズは、Xeon E7の後継プロセッサ。最大8ソケットのサーバーが構築できる。さらに、現世代のXeon Scalableで最も多い最大28コアをサポート
Goldシリーズは、Gold 6100とGold 5100の2種類のモデルがある。多くのサーバーでは、Gold 6100が利用されるだろう。ミドルレンジやエントリーにはGold 5100が採用されると思われる
Silver 4100、Bronze 3100は、エントリーサーバーやワークステーションなどで利用されるだろう

第1世代のXeon ScalableのコアはSkylake


 

 1Xeon Scalable6Core iSkylake14nmKabylake使14nm使

 Skylake使Skylake//

 Platinum 8100Gold 6100/5100Silver 4100HTHyper Threading
Xeon Scalableは、Skylakeコアをベースにして開発されている

 6Core iSkylake

 Xeon Scalable512SIMDAVX-512AVX-512Xeon Scalable1CoreX6Core i7Core i

 AVX-512Xeon使AI

 AVX-512FMAFused Multiply AddPlatinum 8100Gold 61002Gold5100Gilver4100Bronze31001IntelIntel ArkGold 51222FMA
AVX-512は、ビッグデータ処理、AIなどにおいて高速な処理を提供する
SkylakeコアにAVX-512(FMA)を追加している。コンシューマ向けのプロセッサでオフにされていた機能を、Xeon Scalableではオンにしたようだ

キャッシュメモリの持ち方を変更


 Xeon Scalable

 Xeon E7/E5LLCLast Level CacheL32.5MB

 Xeon ScalableLLC1.375MBMLCMiddle Level CacheL21MB
Xeon Scalableでは、プロセッサのキャッシュの持ち方が変わった。コアごとに占有するL2キャッシュが大きくなり、L3キャッシュが小さくなった

 こうしたキャッシュ構造の変更は、プロセッサ内部でコアを接続するインターコネクトのアーキテクチャが変わったからだ。Xeon Scalableでは、Xeon E7/E5で使用していたリングバスから、メッシュバスに変わった。

 変更が行われたのは、コア数が増えてきたことにより、リングバス構造が複雑になってしまったからだ。Xeon E7の24コア製品は、12コアで1リングに接続しているため、リングが2つ存在する。リング間の接続は、2つのバッファによって行われていた。しかし、このアーキテクチャでは、コア数が増えるにつれてリング数が増え、最も遠いコア間ではレイテンシが大きくなるし、プロセッサ設計も難しくなる。モデルによっては、リングを複数持った製品を設計する必要があった。

 そこで、メッシュバスによって接続することで、コア数が増えてもシンプルな設計で済むように変更した。リングバスと比べた場合、コアが配置されている距離によってはレイテンシが大きくなってしまうが、リングバスでコア数を増やした場合に比べると、デメリットが小さいと判断したのだろう。

Xeon Scalableでは、前世代のXeonが採用していたリングバスから、コアとメッシュバスで接続するアーキテクチャに変更されている

Xeon Scalableの仮想化機能


 Xeon ScalableVT-xMBEMode Based Execution controlTSCTimestamp Counter Scaling

 MBEMBE

 MBE

 TSCXeon Scalable

 IntelXeon Scalable4.28

 NVMe SSDPCIeXeon ScalableIntel Volume Management DeviceVMDNVMe SSD

 VMDVMDOSVMDXeon Scalable使
Xeon Scalableでは仮想化のハードウェア支援機能VT-xも改良されている

RAS機能を提供するRun Sure Technology


 Xeon E7/E5ReliabilityAvailabilityServiceabilityRASReliabilityAvailabilityServiceabilityXeon E7E5IntelXeonRASRun Sure Technology

 Xeon ScalablePlatinumGoldRASMCAAdaptive Multi-device error Correction

 SilverBronzeRun Sure Technology使PlatinumGold使SilverBronze
Xeon Scalableでは、Xeon E7/E5が持つRAS機能が統合され、PlatinumとGoldで同じレベルのRAS機能がサポートされている。さらに、周辺チップ(PCH)が持つQuickAssist Technologyなどを組み合わせて、高いパフォーマンスを示している

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 後編では、セキュリティ機能や周辺機能などを説明する。