現在地ホーム»カレントアウェアネス-E»2015年 (通号No.274-No.295 : E1643-E1753)»No.295 (E1748-E1753) 2015.12.24E1752 – The 2015 Altmetrics Workshop<報告>E1742 – 恵庭市立図書館の取組について:様々な声を実現する E1753 – 英国全域の録音資料を明らかにする試み‐BLが調査報告 2015年12月24日 カレントアウェアネス-E No.295 2015.12.24 E1753 英国全域の録音資料を明らかにする試み‐BLが調査報告 2015年1月,英国図書館︵BL︶は英国全域の録音コレクションから稀少かつユニークな音源を保存するとして,“Save Our Sounds”プロジェクトを始動した。1月から5月にかけて英国内に点在する録音資料を把握するための調査が行われ,2015年10月,報告書“National Audit of UK Sound Collections”が公開された。 調査の主な結果は次のとおりである。なお,詳細な回答内容は,“Directory of UK Sound Collections”として別途発行されている。 ●学術機関,団体,企業,個人コレクターを対象に調査を行い,488の所蔵者から3,015のコレクションについて情報が寄せられた。 ●回答者のうち36%が図書館・文書館で,個人も18%を占めているが,放送局やレコード会社からの回答は少なかった。 ●コレクションの主題として多かったのはオーラル・ヒストリー︵36%︶で,以下,言語と会話︵12%︶,演説とイベント︵10%︶,ドキュメンタリーとニュース︵8%︶と続く。 ●調査対象の資料全点のうち,78%は旧式のアナログ録音資料である。特にSPレコードが全体の1/4︵44万点︶と多い。 ●デジタルの複製物を有するコレクションは3割に留まり,6割のコレクションでは複製物を作成していない。 ●全体の1割にあたる299のコレクションでは外部からの資金提供を受けている。資金提供元の多くは,ヘリテージ・ロッタリー・ファンド︵Heritage Lottery Fund‥HLF︶である。 そして,英国には今手を打たなければ失われる危機にある100万点超の録音資料が存在することが証明されたとし,︵1︶調査結果に基づきBLの主題専門家が重要なコレクションを特定すべき,︵2︶危機に曝されている貴重な録音資料を保存すべき,︵3︶録音資料を扱う基礎的な知識およびデジタル化のガイドラインが,図書館によってオンラインで提供されるべき,という提言を行っている。 特に︵2︶については,2015年5月にBLが実施を発表した“Unlocking the UK’s Sound Heritage”プロジェクトにおいて,今回の調査で特定された音源もデジタル化していくという。このプロジェクトは,BLがHLFから950万ユーロの資金提供を受け,2017年から2022年にかけて50万点の音源をデジタル化すると発表したものである。また︵3︶についてBLは,録音コレクションの扱いについてアドバイスするオンラインの情報を発行する,とのことである。 報告書では,国際的なコンセンサスとして,録音資料の保存のために我々に残されているのはあと15年ほどである,と述べている。2030年までに,旧式機器が稀少になること,録音メディアの状態,スキルが失われることにより,保存がコスト高になるばかりか難しくなり,多くの場合不可能になると予測されている。このような状況にBLはどのように対処していくのか,今後の展開が注目される。 関西館電子図書館課・奥村さやか Ref: http://www.bl.uk/britishlibrary/~/media/subjects%20images/sound/national%20audit%20of%20uk%20sound%20collections%20-%20final%20report.pdf http://www.bl.uk/britishlibrary/~/media/subjects%20images/sound/directory%20of%20uk%20sound%20collections.pdf http://www.bl.uk/projects/save-our-sounds http://www.bl.uk/projects/uk-sound-directory http://www.bl.uk/press-releases/2015/may/save-our-sounds-hlf-funding