平成26年2月7日、仕事を半日休んで、青空文庫の”これまで”と”これから”に参加してきました。
青空文庫の”これから”について聞きたくて行ったのですが、”これまで”で1時間半近く話してて”これから”については言及が少なかったですね。きっと運営者側の人たちの中で意見の一致を見ている部分がまだ少ないのでしょう。
それでも、これからの課題と展望の一端が見えたのは大きかったです。
野口英司︵青空文庫立ち上げメンバー︶さんと大久保ゆう︵翻訳家・青空文庫ボランティア︶さんがあげていた、青空文庫の問題点と展望をここであげてみます。
青空文庫の問題点
●良くも悪くも富田さんの青空文庫だった
いわゆる世話人の代表者であった富田さんは、﹁つらいなあ﹂と言いながらも使命感に燃えていたそうです。でも、富田さん亡き後、そのやり方をいつまでも踏襲するわけに行かず、一人ですべてを抱えこむようなやり方をそのまま引き継ぐことはできないとのことでした。司会者の中田さんは﹁富田さんをどう呼んでいいかよくわからなかったし、外からわかりづらかった﹂とコメントしていました。
●運営の不透明さ
野口さん曰く、﹁運営側も内にこもっていた部分も少しあったので、外から見てどういう人が運営しているのかよくわからない﹂とのことでした。
●運営する人たちの負担増
運営者もボランティアなのに、負担がすごくかかって大変だといっていました。最初のころよりはデータベース化などにより大分ましになったものの、青空文庫が定めた約束事に従っているか等を確認するため、最後はどうしても人の目が必要だ、とのことでした。
●校正者不足
野口さん曰く﹁入力はファンの人がどんどんやってくれるけど、校正はやってくれる人が少ない。自分でやってみたことがあるが、どんなに好きな作品でも校正をするのはつらい作業だ。しかも、完成したものに指摘を受けるとミスをした気分になり落ち込んでしまう﹂とのことでした。司会者の中田さんは﹁編集者の作業の一貫としてやるから校正作業ができる。印刷屋でやっているような作業をそれだけでやるととてもつらい。だからこそ編集者もお金がもらえる﹂とコメントしていました。
今後の展望としては以下のことをあげていました。
●有償校正について → 外部の校正者に依頼したらどうか。
●入力校正のオンライン化 → 近代デジタルライブラリーを底本としてクラウド的に入力するプロジェクトにのっかってみる。
●運営体制について → 体面的な、プロモーション面では大久保さんを前面に押し出してみようか?水面下で話合い中
●存命作家登録申請 → 現状著作権存続作品については原則新規登録をストップしているのだが、八巻さんつながりで片岡義男さんだけが特別扱いみたいになっているので、再度考えてみたい。
●本の未来基金 → 寄付の受付体制を整えました。
全体として﹁今までやっていたことを着実につみあげつつも、外に活動が広がっているところもあるので、本の未来基金も活用しつつ、外の力をもっと頼っていきたい﹂﹁中の人はほぼ作業に専念せざるをえないがぜひお手伝いしてほしいです﹂という大久保さんの最後のあいさつに集約されていますね。
プロジェクト・TENのe-Book研究会側の人からは、﹁完全ボランティアでやるやり方は今後は通用しないのではないか﹂﹁青空文庫にお金が還流する仕組みがあった方がいいのでは﹂﹁積極的に商売で使える範囲を明示すべきでは﹂という質問があり、﹁NPOだと居住地にしばられるし財団は大きくて難しい。たぶん株式会社にした方がはやい。しかし、理念と乖離しているように外から見えてしまう﹂という議論が出ていました。
青空文庫自身が商売を考えるとボランティアとして集まっている工作員のモチベーションが下がりそうなのでその部分はあまり考えないほうがいいと思うのですが、まあぼくが口をだすことでもないし。ぼく自身は青空文庫からPD作品を持っていって商売をする自由も保証していると思うので、むしろAmazonや楽天koboもおもしろく見ているのですが、苦々しく思う気持ちも分かります。
もし大久保さんがプロモーションにおいて前面に立つとすれば、﹁青空文庫が育てた﹂的な人でありますし、思いもよらぬコラボレーションが出てくるような期待が持てますね。青空文庫がいよいよその価値を増してくるでしょう。青空文庫のこれからはたぶん明るいです。